バレエのレッスンでよく耳にする「引き上げて!」という言葉。生徒としては「体を上に引っ張ればいいのかな?」となんとなく理解しながらも、本当の意味や感覚を掴むのに苦労する方も多いのではないでしょうか。
今回は、「引き上げ」という言葉の本質と、それを体で体現するための意識とトレーニング方法について解説します。
引き上げ=背筋を伸ばす、ではない?
「引き上げ」と聞くと、多くの方が背中を反らせたり、あごを上げて姿勢を正そうとしがちです。しかし、これでは逆にバランスを崩し、動きが硬くなる原因になります。
本当の「引き上げ」は、骨盤の安定・下腹部のインナーマッスルの活性化・背骨の自然な伸長がそろって初めて感じられるもの。体を硬く「伸ばす」のではなく、内側から引き上がるような感覚が大切です。
コアを使って“内側から引き上げる”感覚とは
バレエで使われる「コア」は、腹横筋、横隔膜、骨盤底筋群、多裂筋などのインナーマッスルのこと。この部分がしっかり働くことで、呼吸と連動しながら上体を支えることができます。
🧘♀️簡単なトレーニング①:ドローイン
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仰向けに寝て膝を立てます。
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鼻から息を吸い、お腹を少し膨らませます。
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口からゆっくり吐きながら、おへそを背骨に近づけるようにお腹を凹ませます。
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10秒キープ、5回繰り返しましょう。
この動きに慣れてくると、立っている状態でも「お腹を内側に引き上げる感覚」をつかめるようになります。
頭のてっぺんまで意識をつなげる
コアで体幹が安定すると、上半身も自然に引き上がります。このとき、頭のてっぺんから糸で吊られているような感覚を持つと、より軽やかで伸びやかなラインが生まれます。
🩰イメージ練習:天井からの糸
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鏡の前で姿勢を整え、つむじから天井に一本の糸で引っ張られているイメージを持ちましょう。
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首や肩が緊張しないようにリラックスしつつ、背骨の一本一本が上へ伸びていくように意識します。
“引き上げ”ができると、何が変わる?
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プリエやジャンプ時の足への負担が減る
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軸が安定しターンやバランスが取りやすくなる
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上体が自由になり、腕の動きや表現力が増す
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疲れにくくなりレッスン中の集中力が続く
特に大人からバレエを始めた方にとって、引き上げは「体に負担をかけずに上達する」ための重要な鍵になります。
まとめ:今日から始める“引き上げ”意識
「引き上げ」は外見的な姿勢の話ではなく、内側から支える筋肉と意識の連動が作り出す感覚です。無理に背筋を伸ばすのではなく、呼吸とともにコアを使う練習を積み重ねることで、自然と身体は美しいラインに整っていきます。
少しずつ、毎日の生活やレッスンの中で「今、自分は引き上がっているかな?」と問いかけてみましょう。その小さな意識の積み重ねが、大きな変化を生み出します。