はじめに
バレエを習っていると、必ずと言っていいほど先生から言われる言葉――
「膝をもっと伸ばして!」
ですが、どれだけ意識しても、なかなか膝が完全に伸びなかったり、ピンとした脚線にならなかったりすることがあります。
「もしかして私の膝は元々曲がっている?」「筋肉が足りない?」と悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。
この記事では、膝が“伸びない”原因を正確に分析し、まっすぐで柔らかいラインを作るための方法を紹介します。
1. 膝が伸びないのはなぜ?
膝がうまく伸びない原因は、ひとつではありません。主に以下の4つが考えられます:
① 太ももの裏(ハムストリングス)が硬い
ハムストリングスが硬いと、膝の伸展(しんてん)が物理的に制限されます。特にアラベスクやデヴロッペで膝が伸びきらない場合、この可能性が高いです。
② 足首・ふくらはぎが固い
バレエでは「引き上げ」と同時に、足首から膝、股関節まで一直線のラインが求められます。足首が固いと膝に余計な力が入りやすくなり、真っ直ぐな脚を作るのが難しくなります。
③ 太もも前側(大腿四頭筋)の筋力不足
実は、膝を伸ばす直接的な筋肉は「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」という太ももの前側の筋肉です。この筋肉が弱いと、脚を伸ばしたまま支えることが難しくなります。
④ 身体感覚のズレ
実際には伸びているのに、まだ曲がっていると感じたり、逆に伸びていないのに「これが限界」と思い込んでいたりするケースもあります。感覚と現実が一致していないパターンです。
2. 正しい「膝を伸ばす」感覚とは?
バレエにおける「膝を伸ばす」は、ただ“脚を突っ張る”ことではありません。以下のような感覚で行うのが理想です。
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床を押し返すように脚を伸ばす
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脚全体が引き上がるような伸び
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力を入れすぎず、でも緩ませない
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膝裏ではなく“太ももの付け根”から伸ばす感覚
この「緊張と柔らかさのバランス」を体で覚えるのが、美しい脚線への第一歩です。
3. 膝が伸びやすくなるエクササイズ
■ ストレッチ①:ハムストリングスストレッチ(寝たまま)
目的:膝裏の柔軟性向上
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仰向けになり、片脚を天井に向けて持ち上げる
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タオルやバンドを足裏にかけ、膝をできるだけ伸ばす
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反対の脚は地面につけたまま、呼吸を続けながら20〜30秒キープ
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左右2セットずつ
👉 無理に引っ張らず、“伸びを感じる”ことを優先しましょう。
■ ストレッチ②:足首とふくらはぎの柔軟体操
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壁に手をついて立ち、片脚を前に出して膝を軽く曲げる
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後ろ足のかかとを床にしっかりつけ、ふくらはぎを伸ばす
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30秒キープ×2セットずつ
👉 この柔軟性があると、ルルヴェやジャンプ時の膝伸展も安定します。
■ トレーニング①:タオルプレス(大腿四頭筋の強化)
目的:膝を伸ばす筋力の獲得
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座って脚を前に伸ばし、膝の下に丸めたタオルを置く
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タオルを膝で押しつぶすように力を入れる
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5秒キープして脱力を繰り返す(10回×2セット)
👉 膝の上に手を添えて、しっかり大腿四頭筋が硬くなっているか確認。
■ トレーニング②:リリース&再教育トレーニング
目的:感覚の再構築と正しい使い方の習得
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バーを持ちながら片脚でタンデュ
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意識して“太もも前”で膝を伸ばす感覚を持つ
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自分の感覚と実際の鏡の見た目をすり合わせていく
👉 使っている筋肉の部位と見た目を一致させる作業が重要です。
4. レッスン中の意識ポイント
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「ひざを伸ばす」よりも「脚全体を引き上げる」意識を持つ
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ふくらはぎに力が入りすぎていないか確認
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両脚をそろえたときに膝と膝が触れているかを確認する(間があいている=曲がっている)
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先生に“何が原因か”を具体的に聞いてみる
5. 経験者の声:「膝が伸びた」と実感するまでの道のり
ある中学生のダンサーは、長年「膝が曲がっている」と言われ続けてきました。彼女が変化を感じたのは、膝裏を無理やり押すのをやめ、脚全体を意識し始めたとき。
彼女が取り入れたのは以下の3つの習慣でした:
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朝晩のハムストリングスストレッチ
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1日1回のタオルプレス
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レッスンで「脚を引き上げる」意識を徹底
3ヶ月後、明らかに脚のラインが変わり、先生からも「膝がきれいになったね!」と声をかけられたそうです。
まとめ:膝は“伸ばす”のではなく“育てる”
膝を伸ばすことは、バレエにおける基礎中の基礎。
でも、その「伸び」は単に筋肉の強さや柔軟性だけで決まるものではありません。
姿勢・感覚・トレーニングの積み重ねによって、
“脚線の美しさ”が自然と現れてくるのです。
焦らず、でも確実に。あなたの脚も、きっと変われます。