多文化都市・ブリュッセルの魅力
ベルギーの首都 ブリュッセル は、EU本部が置かれる「ヨーロッパの心臓」とも呼ばれる都市です。フランス語圏とオランダ語圏の文化が交わり、さらに各国から集まる人々の多様性が街全体に息づいています。中世の面影を残す グラン=プラス や、アールヌーヴォー建築、そしてチョコレートやビールといったグルメ文化でも有名ですが、舞台芸術においても独自の存在感を示しています。
ブリュッセル王立モネ劇場とバレエの歴史
ブリュッセルにおける舞踊の中心は、ブリュッセル王立モネ劇場(La Monnaie / De Munt) です。オペラハウスとして世界的に知られていますが、19世紀から20世紀にかけてはバレエ公演も数多く上演されました。クラシックの傑作が披露されただけでなく、20世紀後半からはモダンダンスやコンテンポラリー作品にも力を入れ、観客に新しい舞踊の魅力を届けてきました。
ベジャール・バレエ団と革新的な舞踊表現
ブリュッセルの舞踊史において特筆すべきは、フランス出身の振付家 モーリス・ベジャール(Maurice Béjart) の存在です。彼は1950年代からブリュッセルを拠点に活動し、ベジャール・バレエ団(Ballet du XXe Siècle) を設立。『ボレロ』『火の鳥』『第九交響曲』といった作品で革新的な演出を次々と発表し、世界のバレエ界に衝撃を与えました。
ベジャールは従来のクラシック作品にとらわれず、哲学・宗教・文学・音楽を大胆に取り入れた舞台を創り上げ、ブリュッセルを現代バレエの最前線へと押し上げたのです。彼の精神は現在も受け継がれ、ブリュッセルは「前衛的な舞踊の都市」として国際的に知られています。
舞踊教育と若手育成
ブリュッセルにはダンス専門の教育機関も多く、特に P.A.R.T.S.(Performing Arts Research and Training Studios) は世界的に有名です。1995年に振付家アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル(Anne Teresa De Keersmaeker)によって設立され、コンテンポラリーダンス教育の最高峰のひとつとされています。ここから輩出されたダンサーや振付家は世界中で活躍し、ブリュッセルを拠点とした舞踊文化の広がりを支えています。
ヨーロッパの交差点が生む舞踊の未来
ブリュッセルは地理的にも政治的にもヨーロッパの中心に位置する都市です。その国際性と多文化性は、バレエやダンスの舞台においても色濃く反映されています。古典的な美しさと革新的な挑戦の両方が共存するブリュッセルは、舞踊芸術における「伝統と革新の交差点」といえるでしょう。
まとめ
クラシックバレエの伝統を踏まえつつ、モーリス・ベジャールらの革新的な表現によって独自の舞踊文化を築いてきたブリュッセル。王立モネ劇場や教育機関を中心に、国際的で多彩な舞台芸術が展開されています。芸術と文化の交差点としての役割を担うこの街は、今後もヨーロッパにおける舞踊の未来を力強くリードしていくことでしょう。