「バレエは呼吸してはいけないものだと思っていた」
そんな声を聞くことがあります。確かに、クラシックバレエの世界では“静かに、美しく、軽やかに”見せることが求められます。しかし、実際には「正しい呼吸」がなければ、動きも感情も伝わりません。
今回は、バレエダンサーにとっての「呼吸」の役割と、そのトレーニング方法について深掘りしていきます。
第1章|呼吸は「テクニックの安定」と「感情表現」の源
🩰 1. なぜ呼吸が大切なのか?
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体幹を安定させる:吐くことで腹圧がかかり、軸がブレにくくなる
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動きに緩急が生まれる:吸って伸び、吐いて沈む。メリハリが自然とつく
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緊張をほぐす:本番やリハーサル時の緊張で呼吸が浅くなりがち。深く呼吸することで心も体もリラックスできる
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感情を伝えるツールになる:儚さ、喜び、苦しみ…すべてを“呼吸”が助けてくれる
第2章|呼吸ができていないとどうなる?
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肩や首がこわばる:息を止めて踊る癖があると、無駄な力が入りやすい
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動きが固く見える:呼吸とともに動くことで“流れ”が生まれる
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集中力が持たない:酸素不足で頭がボーッとし、ミスが増える
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表現が薄くなる:「どんなに上手に踊っても、息遣いがなければ“伝わらない”」というのはよくある話
第3章|日常からできる“呼吸”トレーニング3選
① 横隔膜を意識した「腹式呼吸」
目的:深い呼吸で安定感を高める
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仰向けに寝て膝を立てる
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お腹に手を当て、吸うときにお腹が膨らみ、吐くときに凹むように意識
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5秒吸って、7秒かけて吐く
→ 10回×2セットを毎日実践
💡 呼吸に合わせて背中が床に沈む感覚を意識すると、体幹が自然と働きます。
② バレエ動作との連携呼吸
目的:動きの中で呼吸を使う練習
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プリエ:下がるときに吸って、立ち上がるときに吐く
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アダージオ:腕を上げながら吸って、下ろすときに吐く
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ピルエット:回転前に吸い、回転中に軽く吐く(止めない)
💡 呼吸を“音楽”のように扱うと、自然と表現力が豊かに!
③ 呼吸に合わせた「イメージトレーニング」
目的:心と身体の一体感を高める
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好きな音楽に合わせて目を閉じて呼吸
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吸うときに「広がる」、吐くときに「締まる」イメージで体を感じる
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頭の中で踊るときにも、動きに呼吸を乗せてみる
→ イメージの中でも呼吸を意識することで、実際の踊りに反映されます。
第4章|プロダンサーの“呼吸の秘密”
世界のトップダンサーたちは、ほぼ例外なく呼吸を使って踊っています。
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【マリインスキー・バレエ】のダンサーは「呼吸の音が聞こえるほど」意識的に使っているといわれます
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【パリ・オペラ座】では「呼吸の間」で感情を伝える練習が重視されています
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日本のプロ団体でも、振付指導時に「息を使って!」という指示は頻出
つまり、「技術を超えた表現」には呼吸が不可欠ということです。
第5章|本番で呼吸を活かす3つのポイント
1. リハーサルから“本番用”の呼吸を身につける
→ 本番になって初めて深く呼吸しようとしても遅い!
2. 緊張で浅くなったら“数を数えて”呼吸
→ 4秒吸って、6秒吐くなど、リズムで整える
3. 呼吸を“武器”にする意識を持つ
→ 「息を使って魅せる」「呼吸で空気を変える」と思って踊る
まとめ|呼吸が踊りの「説得力」を生む
バレエでは、つい手先・足先に意識が集中しがちですが、実は「呼吸」が踊りの芯を作っています。
呼吸を味方にすれば、表現の深みも、身体の安定も、あなたの踊りを次のステージへと導いてくれます。