はじめに
「右のアラベスクは綺麗に上がるのに、左だとグラグラする」
「左のピルエットは何回でも回れるのに、右だと全然回れない」
こうした「左右差(さゆうさ)」に悩んだことはありませんか?
バレエは両側均等に使うように見えて、実は知らないうちに利き足・利き手に頼ることが多く、その結果、左右に差が生まれます。
このブログでは、バレエにおける左右差の原因と、その解消に向けた具体的なアプローチ方法について詳しく解説します。
1. なぜ左右差が起こるのか?
① 利き足・利き手の影響
ほとんどの人に「利き足(利き手)」があり、無意識のうちに得意な側に体重をかけたり、バランスを取ったりしています。
バレエでも、
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ピルエットをいつも右で回っている
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片脚でのポワントは左ばかり
といった練習の偏りが左右差を助長します。
② 日常生活の癖
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カバンをいつも同じ肩にかける
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立つときはいつも同じ足に重心をかけている
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座るときに片方の脚を上に組む
これらの習慣が、骨盤や背骨、肩甲骨などの位置を少しずつズラし、アンバランスな体を作ってしまうことがあります。
③ 柔軟性や筋力の差
成長期やケガ後に特定の側だけを多く使ったり、逆にあまり使わなかったりすることで、左右の筋力や可動域に差が出ます。これが回転・ジャンプ・ポワントなど、あらゆる動作の左右差に影響します。
2. 左右差を放っておくとどうなる?
一時的には「得意な方だけで踊ればいい」と思うかもしれませんが、バレエは全身のバランスが求められる芸術です。
放置すると、
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怪我のリスクが増加(片側に負担が集中するため)
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テクニックの限界が早く来る(回転やジャンプに偏り)
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審査員や観客に「アンバランス」な印象を与える
という問題が生じる可能性があります。
3. 左右差に気づくチェック方法
日常のレッスンで次のような動きを試してみましょう:
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バランス(片脚での保持)
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デヴロッペの高さ・安定感
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ピルエットの回転数・軸の安定感
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脚の開き(ターンアウト)
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アラベスクやアチチュードの角度・形
どちらが得意か、なぜ苦手なのかを記録し、傾向を見つけましょう。
4. 左右差を改善するためのステップ
① 苦手な側を「意識的に」練習する
まずは「苦手な側を避けない」ことが大切です。
できる限り、得意な側と同じ回数・同じ強度で練習を行いましょう。
② センターだけでなくバーで調整する
バーでの基本動作でこそ、左右差の修正に最も効果があります。
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バランスを左右同じ秒数キープする
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苦手な側を重点的にアロンジェやロン・ド・ジャンブで確認する
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ク・ドゥ・ピエでの重心感覚を養う
③ コンディショニングトレーニングを取り入れる
ヨガやピラティスなどの補助トレーニングは、身体の歪みに気づき、整えるのに最適です。特に以下の筋肉バランスを整えることで効果が出ます:
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中臀筋(ちゅうでんきん):骨盤の安定に関わる筋肉
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腹横筋(ふくおうきん):体幹の深部筋で左右の回転の軸を安定させる
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脊柱起立筋:姿勢維持に重要
④ 柔軟性の偏りも要注意
一方だけが柔らかいとバランスが崩れます。ストレッチの際も、左右均等な時間を確保し、特に硬い側を丁寧にほぐしましょう。
5. メンタル面でも左右差に向き合う
左右差が気になりすぎて「苦手な側=嫌い」と感じてしまうと、それがプレッシャーやストレスになり、体がより硬くなってしまいます。
**「苦手だからこそ伸びしろがある」**と捉え、自分に優しく向き合うことも、改善への第一歩です。
おわりに:左右差は「悪」ではなく「個性」でもある
左右差は、バレエを真剣にやっているからこそ気になるテーマ。
しかし、完璧な左右対称を目指すのではなく、自分の身体を知り、整え、使いこなしていくことが本当の目標です。
身体の“片側の壁”を越えた先に、本当に自由な踊りが待っています。
焦らず、じっくりと、身体の声に耳を傾けてください。