はじめに
バレエは芸術でありながら、アスリート並の身体能力が求められる世界です。ジャンプ、回転、ポワントでの立ち姿…。これらの動作を繰り返す中で、ダンサーの身体には多大な負担がかかります。
しかし、美しさを追い求めるあまり、ケガを無理して隠してしまうのもまた、バレエの現場でよく見られる問題です。
しなやかに、長く踊り続けるためには「ケガを予防する」ことが何よりも大切です。
今回は、バレエダンサーが陥りやすいケガとその予防方法、そして日々取り入れたいセルフケアの習慣について解説します。
1. バレエに多いケガとは?
✅ 捻挫(足首)
**最も多いケガのひとつ。**ポワントワーク中の不安定な足首や、着地のズレが原因となります。
✅ 腰痛
アンデオールの無理なキープや、骨盤の歪み、体幹の弱さから発生しやすい。
✅ 膝の痛み(膝蓋骨炎など)
ジャンプの着地やターンアウト時の誤った膝の向きにより、膝関節に負担がかかります。
✅ アキレス腱炎
つま先での立ちすぎや、柔軟性の欠如によって腱が炎症を起こすケース。
✅ 疲労骨折
とくに若年層に多く見られ、足の甲やすねに痛みが出る。栄養不足やオーバーワークが主な原因。
2. なぜケガをするのか?主な原因
原因 | 詳細 |
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柔軟性の不足 | 筋肉が硬いと無理な動きで関節に負荷がかかる |
筋力のアンバランス | 体幹や内腿、足指の筋力不足が代償動作を招く |
正しいテクニックが身についていない | ターンアウトや着地での身体の使い方に問題がある |
過度なトレーニング | 疲労が蓄積してリカバリーできず、炎症や骨折を引き起こす |
睡眠・栄養の不足 | 回復力が低下し、慢性的な疲労が抜けない |
3. ケガを予防するために今日からできること
① 正しいウォームアップを怠らない
ただストレッチするだけでなく、動的なウォームアップを取り入れましょう。
おすすめウォームアップ(10〜15分)
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スクワットやランジ(股関節と膝の準備)
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アンクルサークル(足首)
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肩回しと背中ほぐし(アームスと上体)
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サイドプランクやバランスボール(体幹の活性化)
② テクニックの見直し
プロの指導者に「本当に正しくターンアウトできているか」「プリエの時に膝が内側に入っていないか」などを見てもらいましょう。自己流のクセはケガのもとです。
③ クロストレーニングを取り入れる
バレエ以外の運動で筋肉のバランスを整えることが、ケガ予防に効果的です。
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ピラティス:体幹の安定とアライメント改善
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スイミング:関節に負担をかけずに全身を強化
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セラバンドトレーニング:足指・足裏・内転筋の強化
④ こまめなリカバリー
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冷やす(アイシング)
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温める(お風呂・蒸しタオル)
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ストレッチ
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睡眠(7〜9時間)
練習後30分以内の「回復ケア」は非常に重要です。
4. ケガと向き合うマインドの作り方
✔「ケガ=ダメなこと」ではない
バレエの現場では「ケガ=弱さ」と捉えられがちですが、それは間違いです。ケガは身体からの“サイン”であり、無視すべきものではありません。
✔「人と比べない」意識を
ケガをしている間に他の人が進んでいくと、焦りが生まれがちです。でも大丈夫。一度ケガをしっかり治した人は、身体の使い方により敏感になり、踊りが美しくなることもあります。
5. 親や指導者ができるサポート
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子どもの訴えに耳を傾ける(無理にレッスンへ行かせない)
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ケガの症状を軽視せず、早めに整形外科や理学療法士に相談
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バレエだけでなく日常の姿勢やクセも一緒に観察する
6. バレエは「生涯」
ケガを防ぐことは、「今、美しく踊るため」だけでなく、
将来、バレエを長く楽しむための投資でもあります。
舞台に立ち続けたいなら、プロを目指したいなら。
まずは、自分の身体と誠実に向き合いましょう。
おわりに|「予防」は最高の治療
ケガをしてから治すよりも、ケガをしない身体作りが一番効果的で、コストも少なくすみます。
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正しい動き
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適切なトレーニング
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十分な休養と栄養
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心のケア
この4つの柱が揃えば、あなたのバレエ人生はもっとしなやかに、もっと豊かになります。