はじめに
「プリエ(plié)はすべての動きの始まり」と言われるように、プリエはクラシックバレエにおける“基礎中の基礎”です。
ですが、長年レッスンしている人の中でも、意外と「なんとなく」膝を曲げているだけの人も少なくありません。
今回は、プリエの本質を深掘りしながら、なぜプリエがそれほど大事なのか、どうすればより質の高いプリエができるのかを、解剖学や実践トレーニングの観点も交えてご紹介します。
1. プリエは何のためにあるのか?
プリエには以下のような役割があります:
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地面からの反発力を感じる(→ジャンプやターンの準備)
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関節の可動域を最大限に使う(→足のラインを美しく保つ)
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筋肉と骨格の連動を高める(→ケガの予防)
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動きの始まりと終わりを明確にする(→音楽性と表現力)
つまり、プリエは単なる“準備動作”ではなく、踊るための力を「蓄え、引き出す」エネルギーの貯金箱なのです。
2. よくあるプリエの間違い
● 間違い①:膝が内側に入る
原因: ターンアウト不足・内転筋が使えていない
影響: 膝・足首のケガにつながる
● 間違い②:骨盤が前傾/後傾する
原因: 体幹の弱さ・股関節が使えていない
影響: 背中が反ったり、腰に負担がかかる
● 間違い③:かかとがすぐ浮く
原因: 足裏の筋力不足・足指がうまく使えていない
影響: 重心が安定せず、バランスが崩れる
● 間違い④:動きが浅い/雑
原因: 筋力不足・動きの目的があいまい
影響: その後のジャンプ・ターンの質が落ちる
3. 正しいプリエのチェックポイント
立ち姿勢のチェック(before plié)
✅ 耳・肩・腰・くるぶしが一直線か?
✅ 骨盤は立っているか?(前傾/後傾していないか)
✅ 太ももを外旋し、足裏全体で床を捉えているか?
プリエ中の動き(motion)
✅ 膝は足先の方向と同じラインをキープしているか?
✅ 股関節から曲げているか?(膝だけでなく)
✅ お尻が突き出たり、腰が抜けていないか?
✅ 呼吸は自然か?
プリエ後の戻り(recovery)
✅ 反動で戻していないか?
✅ 動きが速すぎないか?
✅ 太ももの内側を使って“床を押して”戻れているか?
4. プリエのためのトレーニング法
■ エクササイズ①:壁プリエ(骨盤の位置確認)
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壁に背中・お尻・かかとをつけて立つ
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足を1stまたは2ndポジションに開く
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壁から離れないように、ゆっくりプリエする
→ 骨盤が後傾しないように保ちつつ、股関節から曲げる感覚を養います。
■ エクササイズ②:セラバンド内転筋トレ
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両脚にセラバンドを巻き、足を1stに開く
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内ももを使ってプリエ・戻りを繰り返す(10回×2セット)
→ 膝が内側に入りにくくなり、内転筋で床を押す感覚がつかめます。
■ エクササイズ③:つま先で床を押す意識強化
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足を1stポジションにして立つ
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プリエをしながら、親指の付け根で床を押し続ける
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かかとが勝手に浮かないようコントロール
→ 足裏全体で床を感じ、安定したプリエを作る感覚が育ちます。
5. レッスンでプリエを「味方」にするコツ
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毎回のバーレッスンで“気づき”を持つことが大切
→「今日は膝の方向を意識する」「今日は股関節の深さを感じる」など、テーマを一つに絞る -
音楽と連動することが上達の鍵
→ ただリズムに合わせるのではなく、「吸うように下がり、押すように戻る」ことで、動きに質感が出ます -
鏡だけでなく、“内観”を大切に
→ 鏡の見た目ではなく、“筋肉の使われ方”や“重心の移動”を感じ取る練習が、プロの感覚につながる
まとめ:プリエを極めることは、バレエを極めること
一見シンプルな動きでありながら、プリエにはすべての動きの基礎が詰まっています。
あなたのジャンプの高さも、ターンの軸も、美しいラインも、すべてはプリエの質から始まるのです。
ぜひ、明日からのレッスンで、「いつもより1ミリ深く、丁寧なプリエ」を意識してみてください。
その小さな変化が、あなたのバレエを大きく変えていきます。