王の情熱が芸術を変える
17世紀フランス、バレエはルイ14世(通称:太陽王)の時代に大きく発展します。彼自身がダンサーとして舞台に立ち、特に『夜明けのバレエ』では太陽神アポロン役を演じたことで有名です。
1661年、ルイ14世は世界初のバレエ教育機関「王立舞踏アカデミー(Académie Royale de Danse)」を設立。これにより、バレエは貴族の余興から専門的な舞台芸術へと変化していきました。
振付の記録と技術体系化
この時代、振付やステップが体系化され、今日まで続くバレエの基礎が確立します。足のポジション(1〜5番ポジション)やアームス(腕の位置)の基本形はこの時期に整理されました。
18世紀:ストーリー性のあるバレエへ
バレエ・ダクション(Ballet d’action)の登場
18世紀になると、舞踏だけでなく物語性を重視した「バレエ・ダクション」が流行します。振付家ジャン=ジョルジュ・ノヴェールは「手紙」で知られる著書『舞踏とバレエについての手紙』の中で、演技表現と物語の重要性を説きました。
代表作としては『メデアとジェイソン』などがあり、音楽・振付・演技が一体となった舞台が誕生します。
19世紀前半:ロマン主義バレエの黄金期
幻想的な世界観
この時代は『ラ・シルフィード』(1832年)や『ジゼル』(1841年)など、妖精や精霊が登場する幻想的な物語が人気でした。女性ダンサーがトウ・シューズで踊り、軽やかで浮遊感のある動きを見せる「ロマンティック・チュチュ」もこの時期に確立。
代表作と作曲家
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『ラ・シルフィード』(振付:フィリップ・タリオーニ)
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『ジゼル』(振付:ジャン・コラリ&ジュール・ペロー / 音楽:アドルフ・アダン)
19世紀後半:古典バレエの確立
ペテルブルクとマリインスキー劇場の台頭
ロシア・サンクトペテルブルクでは、マリウス・プティパが多くの名作を生み出しました。プティパは壮大な構成と華やかな群舞、技巧的なソロを特徴とし、今日まで上演され続ける古典バレエを確立しました。
代表作と作曲家
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『白鳥の湖』(1877年初演 / 音楽:チャイコフスキー / 後にプティパ&イワノフ改訂版が定番化)
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『眠れる森の美女』(1890年 / 音楽:チャイコフスキー)
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『くるみ割り人形』(1892年 / 音楽:チャイコフスキー)
20世紀:近代バレエと多様化
バレエ・リュスの革命
ロシアのセルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ団「バレエ・リュス」は、1910年代〜1920年代にかけてパリを中心に活動し、舞台芸術を刷新しました。
振付家ミハイル・フォーキン、ダンサーのニジンスキー、作曲家ストラヴィンスキー、美術家ピカソなどが参加し、『火の鳥』『春の祭典』など革新的な作品を発表。
アメリカと現代バレエの発展
20世紀後半には、アメリカのジョージ・バランシンが「ネオクラシック・バレエ」を確立し、装飾を削ぎ落とした純粋なダンス表現を追求しました。
世界の名作一覧(時代別)
時代 | 代表作 | 作曲家 | 振付家 |
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19世紀ロマン主義 | ジゼル | アドルフ・アダン | コラリ&ペロー |
19世紀古典 | 白鳥の湖 | チャイコフスキー | プティパ&イワノフ |
19世紀古典 | 眠れる森の美女 | チャイコフスキー | プティパ |
20世紀革新 | 春の祭典 | ストラヴィンスキー | ニジンスキー |
現代 | セレナーデ | チャイコフスキー | バランシン |