バレエで美しい姿勢を保ち、しなやかに腕や脚をコントロールするためには、背中の筋肉が重要な役割を果たします。特に 脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん) と 広背筋(こうはいきん) は、バレエの基礎から高度なテクニックまで支えている大切な筋肉です。ここでは、それぞれの筋肉の位置・役割・バレエにおける重要性について詳しく見ていきましょう。
脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)
位置と構造
脊柱起立筋は、背骨に沿って縦に長く走る大きな筋肉群で、背中の最も深層に近い部分にあります。正確には3つの筋肉の集合体です。
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腸肋筋(ちょうろくきん) – 背骨の外側に位置
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最長筋(さいちょうきん) – 背骨の中央に位置
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棘筋(きょくきん) – 背骨のすぐ内側に位置
この3つが一体となって背骨を支えています。
役割
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背骨をまっすぐに保つ(姿勢保持)
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背中を反らす動き(伸展)
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上体を横に倒す動き(側屈)
バレエでの重要性
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アラベスクやカンブレ:背中をしなやかに反らす動きを支える。
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立ち姿の美しさ:背骨をまっすぐに保ち、引き上げられた姿勢を作る。
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バランス保持:片足でのポーズや回転で軸を安定させる。
脊柱起立筋が弱いと、猫背になりやすく、アラベスクやアティテュードで腰を詰めてしまう原因になります。
広背筋(こうはいきん)
位置と構造
広背筋は、背中の表層を覆う大きな筋肉で、腰から脇の下にかけて広がっています。人体の中でも特に大きな筋肉のひとつで、翼のように背中を覆う形をしています。
役割
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腕を後ろに引く(伸展)
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腕を内側に回す(内旋)
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腕を体側に引き寄せる(内転)
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呼吸の補助(深呼吸で胸郭を広げる動きに関与)
バレエでの重要性
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ポールドブラ(腕の動き):広背筋がしっかり働くと、腕が軽やかに動き、肩が上がりにくくなる。
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リフトやジャンプ:上半身の引き上げを助け、全身のコントロールにつながる。
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呼吸との連動:深い呼吸を助け、踊りの中で安定したスタミナを維持できる。
広背筋が硬くなると、肩が内側に巻き込みやすくなり、姿勢が崩れてしまいます。逆に鍛えすぎると「厚み」が出すぎてラインが崩れるため、柔軟性を保つことが大切です。
その他、背中で大切な筋肉
菱形筋(りょうけいきん)
肩甲骨の間にある筋肉で、肩甲骨を寄せて胸を開く働きを持ちます。
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バレエではデコルテを美しく見せるのに必須。
僧帽筋(そうぼうきん)
首から肩、背中の上部に広がる筋肉。上部・中部・下部に分かれて肩甲骨や首の動きを支えます。
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ポールドブラで肩がすくまないよう安定させる役割。
大円筋・小円筋
肩甲骨と腕をつなぐ小さな筋肉。広背筋と連動して腕の動きを助けます。
バレエにおける背中の筋肉の使い方
バレエで背中を正しく使うためには、単に「反る」だけでなく、以下の意識が大切です。
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脊柱起立筋で背骨を引き上げる
→ 立ち姿をまっすぐ保ち、上半身を長く見せる。 -
広背筋で肩を安定させる
→ ポールドブラで腕を下から支えるように動かす。 -
菱形筋・僧帽筋でデコルテを開く
→ 上体がつぶれず、胸を広く見せる。
これにより、アラベスクやポールドブラが「ただ形を取る」ものではなく、体幹からつながった美しいラインになります。
まとめ
背中の筋肉は、バレエにおける美しい姿勢やラインをつくるための土台です。
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脊柱起立筋:姿勢保持・背中の伸展
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広背筋:腕の動き・呼吸の補助
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菱形筋・僧帽筋:肩甲骨の安定・デコルテを開く
これらを理解し、ストレッチとトレーニングをバランスよく取り入れることで、背中のラインがしなやかに伸び、アラベスクやポールドブラが格段に美しくなります。