バレエの基本ポジションのひとつ「アンオー(en haut)」。
両腕を頭上で優雅に丸めたこのポジションは、舞台上でとても印象的です。
しかし――「なんだか自分のアンオーは野暮ったい」「肩が上がってしまう」「腕のラインがガタガタに見える」と感じたことはありませんか?
実は、美しいアンオーの鍵は**“背中と肩甲骨の使い方”**にあります。
腕の形だけを意識しても、本質的な美しさは出せません。
この記事では、アンオーが美しく見えるための体の使い方を、解剖学的視点と実践的なアドバイスの両面から解説していきます。
1. アンオーの美しさを決める「3つの要素」
① 肩の位置:上がらず・開きすぎず・力まない
肩が上がると首が詰まり、エレガントさが半減します。逆に開きすぎると力んで見え、不自然です。
② 肘と手首のカーブ:楕円を意識
直線的すぎるとバレエらしい柔らかさが出ません。手首も肘も、なめらかなカーブを描くことが重要です。
③ 腕を支える筋肉:腕ではなく背中から
見た目以上に、アンオーの形を保つには筋力が必要です。とくに、**肩甲骨周りと広背筋(こうはいきん)**を正しく使うことで、長時間美しいラインをキープできます。
2. 肩甲骨と広背筋がカギを握る理由
▶ 肩甲骨(けんこうこつ):腕の土台
肩甲骨は、背中に浮かんだ羽のような骨。腕の動きはすべてこの肩甲骨から始まります。正しく可動することで、肩の力を抜いたまま腕を動かすことが可能になります。
▶ 広背筋(こうはいきん):腕を“支える”筋肉
肩甲骨から腰のあたりまで広がる大きな筋肉で、アンオーの腕を“下から支える”役割を担います。腕を背中から持ち上げるように使うことで、腕だけで頑張らずに済みます。
3. 背中から使う感覚を身につけるトレーニング
■ エクササイズ①:肩甲骨のスライド運動
目的:肩甲骨を柔らかく動かす
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壁に背をつけて立つ
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両肘を曲げて壁にくっつける(W字)
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ゆっくりと肘を頭上へスライドさせていき、Y字を目指す
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肩が上がらないように注意しながら、10回繰り返す
👉 背中の動きと肩の脱力の両方を感じる練習。
■ エクササイズ②:広背筋を感じるバンザイ運動
目的:広背筋の意識を高める
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両手を上にあげ、バンザイの姿勢をとる
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ゆっくりと腕を下げながら、背中で引っ張ってくる感覚を意識
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肩をすくめず、脇の下から背中の筋肉を使うイメージで行う
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10回×2セット
👉 アンオーの“支え”を背中で感じる練習。
■ エクササイズ③:四つ這いアームリフト
目的:肩甲骨から腕を動かす練習
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四つ這いの姿勢になる
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お腹に力を入れて背中を安定させる
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片腕を前に伸ばし、肩甲骨を寄せずに持ち上げる
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交互に左右10回ずつ
👉 肩ではなく“背中から”腕が伸びる感覚を体で覚えます。
4. レッスン中に気をつけるべきポイント
5. よくある失敗パターンと改善法
症状 |
原因 |
改善ポイント |
肩が上がる |
首・肩に力が入っている |
広背筋を意識、肩甲骨を下げる |
手が遠すぎる |
腕だけで持ち上げている |
背中から支える意識 |
肘が落ちる |
筋力不足・意識不足 |
手のひらで天井を押す感覚 |
まとめ:アンオーの美しさは「背中」がつくる
アンオーは、単に「腕を丸く構える」ポーズではありません。背中・肩甲骨・広背筋といった体の裏側の働きによって支えられる、繊細かつダイナミックなポジションです。
「腕が重い」「肩が疲れる」と感じる人は、まず背中の使い方を見直すことが、上達の近道になるでしょう。
見えないところを丁寧に鍛え、**“しなやかで品のあるアンオー”**を手に入れましょう。