アダージオ(Adagio)とは?バレエの優雅さを引き出すスロー・ムーブメント

バレエの世界には、軽やかなジャンプや高速回転だけでなく、ゆったりとした動きの中に強さと美しさを秘めたテクニックがあります。
その代表格が 「アダージオ(Adagio)」 です。

フランス語で「ゆっくりと」を意味するこの言葉は、クラシック音楽のテンポを示す言葉としても知られています。バレエでは、 ゆったりとしたテンポで行う動き音楽的なフレーズ を指し、ダンサーの柔軟性・バランス・表現力が試される重要なパートです。


バレエにおけるアダージオの意味

バレエのレッスンでは「センター・アダージオ(Adagio au centre)」や「バー・アダージオ(Adagio à la barre)」といった形で登場します。

  • バー・アダージオ
    バーレッスンで行うアダージオ。ゆっくりとした動きで筋肉を伸ばし、体幹とバランス感覚を養います。

  • センター・アダージオ
    バーから離れて行うアダージオ。美しいポーズを保ちながらゆっくりと移行することで、舞台上での表現力を磨きます。

  • パ・ド・ドゥのアダージオ
    男性ダンサーと女性ダンサーがペアで踊るとき、冒頭に披露されるのがアダージオ。支えられながら行う大きな動きは、作品のドラマ性を際立たせます。


アダージオに含まれる代表的な動き

アダージオは単体のステップではなく、いくつかの動作を組み合わせて構成されます。主なものは以下の通りです。

  • デヴェロッペ(Développé):脚をゆっくりと高く伸ばす動き

  • アラベスク(Arabesque):片脚を後方に伸ばして静止するポーズ

  • アチチュード(Attitude):膝を曲げて持ち上げるポーズ

  • ロン・ド・ジャンブ・アン・レール(Rond de Jambe en l’air):空中で脚を円を描くように回す動き

これらをゆったりと繋げることで、ダンサーのコントロール力や柔軟性、音楽性が観客に伝わります。


アダージオを美しく踊るためのポイント

  1. 軸を安定させる
    ゆっくりとした動きほど体幹のブレが目立ちます。腹筋・背筋・内腿を意識し、軸をしっかり保つことが大切です。

  2. 呼吸と音楽を合わせる
    音楽のフレーズに合わせて呼吸を乗せると、動きに自然な流れが生まれます。

  3. 手と腕の表現を丁寧に
    アダージオでは上半身の表現が特に重要。ポールドブラ(腕の動き)を大きく、なめらかに使いましょう。

  4. 静止の美しさ
    動いているときだけでなく、ポーズで止まった瞬間の美しさもアダージオの見どころです。


アダージオの役割と魅力

  • 技術力の証明
    ジャンプや回転が得意なダンサーでも、アダージオが弱いと「基礎不足」と見なされてしまいます。ゆっくりとした動きはごまかしが効かないため、基礎力を如実に表すのです。

  • 物語性の演出
    パ・ド・ドゥのアダージオは、作品の感情表現やキャラクターの関係性を伝える大切な場面。観客は踊りの中で物語の核心を感じ取ります。

  • 身体のラインを際立たせる
    ゆっくりとした動作の中で、ダンサーの体のラインや柔らかさが最大限に引き出されます。


アダージオが印象的な作品例

  • 『白鳥の湖』第2幕
    オデットとジークフリート王子のパ・ド・ドゥ。音楽とともに流れるアダージオは、物語のクライマックスに匹敵する感動を生みます。

  • 『眠れる森の美女』ローズ・アダージオ
    オーロラ姫が4人の王子と踊る名場面。バランス力と表現力が試される有名なアダージオです。


まとめ

  • アダージオ(Adagio)は「ゆっくりと」を意味し、バレエではスローで流れるような動きを指す

  • バー・アダージオ、センター・アダージオ、パ・ド・ドゥのアダージオなど様々な形がある

  • バランス、柔軟性、音楽性、表現力を養う大切な練習

  • 『白鳥の湖』『眠れる森の美女』など名作の見せ場にも登場する

アダージオは、派手さこそないものの、ダンサーの美しさを最も際立たせる時間です。基礎を大切にしながら、音楽に身をゆだねることで、本物の「優雅さ」を表現できるでしょう。


🔗 参考リンク

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