はじめに|「食べない美しさ」はもう古い
バレエの世界では長年、「細さ=美しさ・軽やかさ」とされてきた価値観が根強くありました。しかし、近年ではこの認識が大きく変わりつつあります。
強く、しなやかに、美しく踊るには、しっかり食べることが不可欠。
食事は単なるエネルギー補給ではありません。バレエダンサーにとって食事とは、
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ケガの予防
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回復力の向上
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集中力とパフォーマンスの維持
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美しい肌や筋肉の形成
といった、**“踊るための土台”**を支える非常に重要な要素なのです。
1. バレエに必要な栄養素とは?
✅ タンパク質:筋肉の修復と成長に不可欠
バレエは持久力と筋力が必要な全身運動。筋肉を酷使する分、しっかりと修復しなければなりません。
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良質なタンパク質源:鶏胸肉、卵、豆腐、納豆、ヨーグルト、魚など
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タイミング:レッスン後30分〜1時間以内が最適
✅ 炭水化物:エネルギーの主役
炭水化物を極端に減らすと、すぐに疲れて集中力もダウンします。バレエに必要な瞬発力・持続力を支える燃料です。
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積極的に取りたい炭水化物:玄米、雑穀米、オートミール、全粒粉パン、さつまいも
✅ 脂質:ホルモンと神経のバランスを整える
「脂質=太る」は誤解。特に女性は脂質不足になるとホルモンバランスが崩れ、生理不順や骨密度低下のリスクがあります。
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良質な脂質源:アボカド、ナッツ、オリーブオイル、青魚
✅ ビタミン・ミネラル:ケガ予防と回復に
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カルシウム(骨の健康):乳製品、小魚、小松菜
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マグネシウム(筋肉の働き):ナッツ、バナナ、豆類
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ビタミンD(骨密度の維持):きのこ類、日光浴
2. バレエダンサーの1日モデル食事例(中高生~大人編)
朝食(レッスン前)
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オートミール+バナナ+はちみつ+豆乳
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ゆで卵1個
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ハーブティー
→ 朝に炭水化物と少量のたんぱく質でエネルギーをチャージ。
昼食(リハーサル前後)
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雑穀ごはん+鶏の塩麹焼き+野菜たっぷり味噌汁
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プチトマト、ブロッコリーのサラダ
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プルーンやナッツ類
→ 踊りながらも消化に負担が少なく、栄養バランス◎
軽食(夕方のレッスン前)
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バナナ or おにぎり(小)+プロテインドリンク
→ エネルギー補給と集中力維持のために間食を活用。
夕食(レッスン後)
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豆腐ハンバーグ+玄米+具沢山の味噌汁
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小鉢にひじき煮 or 白和え
→ 練習後は筋肉修復のためにたんぱく質を中心に。消化にも優しい献立を。
3. 食べないとどうなる?ダンサーに多い“栄養失調”のリスク
やせすぎ・栄養不足は、バレエに深刻な影響を与えます。
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貧血でめまいが起こる
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集中力が低下して振り覚えができない
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筋力が落ちてジャンプが飛べない
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骨粗しょう症で疲労骨折を起こす
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生理が止まる(女性ホルモンの乱れ)
特にティーンエイジャーの頃に無理なダイエットをすると、将来のパフォーマンスに大きく影響してしまうことも。
「食べることは、踊ること」なのです。
4. バレエと食事にまつわる誤解を解く
❌誤解 | ✅本当は… |
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ご飯は太る | 量とタイミングを守れば、むしろ必要不可欠 |
プロテインは筋肉がムキムキになる | 筋肉を修復し、美しいラインを作るために有効 |
痩せていればOK | 体重よりも、動ける身体・ケガをしない身体が重要 |
5. 心と身体を整える“食のマインドセット”
バレエは自己表現の芸術です。そして、自分の身体こそが最大の楽器。
だからこそ、「自分を大切にする」意識を、食事の場面にも持ち込みましょう。
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今日のレッスンに向けて、何を食べよう?
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疲れた身体をいたわる食材は?
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頑張ったごほうびに、心が喜ぶデザートを1つだけ
身体を“管理する”のではなく、“ケアする”という発想が、心の余裕と踊りの深さを生み出してくれます。
おわりに|食べることは、自分と向き合うこと
バレエダンサーにとって食事とは、単なる栄養補給以上の意味があります。
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自分の身体の声に耳を傾ける
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パフォーマンスの質を高める
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心を整える時間にする
しっかり食べて、しっかり動き、しっかり休む。
この循環こそが、長くバレエを楽しむための“踊れる身体”と“健やかな心”をつくる鍵です。