はじめに:成長は痛みと共に訪れる
思春期のバレエダンサーにとって、成長は喜ばしい一方で、多くの困難をもたらします。
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身長が急に伸びたことでバランスが取りづらくなる
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筋肉と骨の成長スピードの不一致で痛みが出る
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思い通りに踊れないストレス
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ケガが増えやすくなる
これらの悩みは、バレエに真剣に向き合うからこそ感じるもの。
本記事では、成長期に起こる身体的・心理的変化を理解し、ダンサー本人と保護者・指導者がどう対応すべきかを考えます。
1. 成長期に体の中で何が起きている?
思春期の成長は、ただ「背が伸びる」だけではありません。
以下のような急激な変化が複合的に起きています。
✅ 骨の成長が筋肉より早く進む
→ 筋肉や腱が骨に引っ張られることで痛み(成長痛)や硬さが生じる。
✅ 骨端線が未成熟なため、外的衝撃に弱い
→ 成長軟骨はダメージに弱く、疲労骨折や剥離骨折を起こしやすい。
✅ 身長の急激な変化で重心やバランス感覚が変わる
→ 今までできた動きが急に難しくなる。ジャンプやターンのタイミングがずれる。
✅ ホルモンバランスの影響で気分や集中力に波がある
→ モチベーションが不安定になりやすく、自己肯定感が揺らぐ。
2. 成長痛や変化と向き合う5つの視点
💡 ① 痛みを我慢しない・見逃さない
「ちょっと痛いけど練習は続ける」という意識は危険です。
成長期の痛みは正しいケアで軽減できるので、早めに信頼できる整形外科やスポーツトレーナーに相談しましょう。
💡 ② ストレッチとリリースを日課に
筋肉の柔軟性を保つことで、骨との引っ張り合いを緩和できます。
特にハムストリング、ふくらはぎ、股関節周りは重点的にほぐしましょう。
💡 ③ 栄養バランスを見直す
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骨の成長にはカルシウム・ビタミンD・マグネシウム
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筋肉の発達にはたんぱく質・鉄分
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疲労回復にはビタミンB群・亜鉛
思春期は食欲や嗜好の変化もある時期。食事で摂れない場合はサプリメントも検討しましょう。
💡 ④ 踊れない時間も“バレエの時間”
一時的に動きが制限されても、「観察・分析・音楽の理解・イメージトレーニング」など頭でバレエを学ぶ時間に充てられます。これは、将来的に大きな武器になります。
💡 ⑤ 自分の体と対話する力を育てよう
「なんとなく痛い」ではなく、「どこが、どんな動きで、どの程度痛むのか」――
言語化することで、自分の体への理解が深まり、ケガの予防・早期対応が可能になります。
3. 指導者と保護者ができるサポートとは
🧑🏫 指導者の場合:
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毎回のレッスンで“成長による変化”を前提にした指導を意識する
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動きができなくなっても責めずに、段階的に戻す計画を一緒に立てる
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ストレッチや補助トレーニングの時間を増やす
👪 保護者の場合:
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食事、睡眠、感情面でのサポートが最も重要
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成長痛や身体の変化を**「甘え」と誤解せず、正しく理解する**
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目先の発表会よりも長い目での健康と成長を大切にする
4. バレエ人生は長距離マラソン
思春期は、バレエを続けるか悩む子も多い時期です。
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体型が変わる
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踊れない
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周りと比べて焦る
しかしここで無理をして燃え尽きてしまうよりも、
**「自分のペースで、自分の体と向き合う力」**を育てることのほうが、長いダンサー人生にとってはるかに大切です。
おわりに:変化を恐れず、共に育つ
成長は、すべてのダンサーにとって通る道。
あなたが感じている痛みや不安は、未来の表現力や深みにつながる大切な時間です。
どうか、焦らず、自分の体と対話しながら前に進んでください。
そして、まわりの大人たちも――
この時期に必要なのは「結果」ではなく「理解と見守り」だということを、忘れないようにしたいですね。