クラシックバレエにおける重要なキーワードのひとつが「引き上げ(pull up)」です。これは単なる姿勢のことではなく、身体全体の内側からの支えとエネルギーの流れを感じながら動く、バレエ特有の身体操作を指します。特に大人からバレエを始めた方にとっては、この「引き上げ」の感覚を掴むことが大きな壁になることも。しかし、正しい方法で身体を整え、日常の中でも意識を高めていくことで、誰でも引き上げを体得することが可能です。
本記事では、「引き上げ」の定義から実践方法まで、段階的に解説していきます。
🎯 「引き上げ」とは何か?
まずは「引き上げ」の意味を正しく理解しましょう。
バレエでいう「引き上げ」とは、単に身体を上に引っ張るという意味ではありません。以下の要素が複合的に組み合わさっています。
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骨盤を立てる(ニュートラルポジション)
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腹横筋や骨盤底筋といったインナーマッスルの活性化
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背骨を積み上げるような縦方向の伸び
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肩と首のリラックス
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床を押す力との拮抗による上下のエネルギーの流れ
つまり、外から見た「美しい姿勢」だけではなく、内側からの支えとエネルギーのコントロールが不可欠なのです。
🧠 引き上げの感覚がつかめない原因
特に大人の方が「引き上げ」を感じづらい原因は、以下のような点にあります。
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日常姿勢のクセ(反り腰、猫背、巻き肩など)
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インナーマッスルの意識が弱い
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肩や首に力が入りやすい
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重心が足先にかかっている
このような状態では、いくら「姿勢を正そう」としても、結果的に「上半身だけ硬くなる」「足元が不安定になる」など、逆効果になることも。
💪 引き上げを体得するための実践エクササイズ
ここでは、段階的に引き上げを体感するためのシンプルで効果的なトレーニングを紹介します。
【STEP1】骨盤のニュートラルを知る
仰向けに寝て、骨盤の前傾・後傾を繰り返し、ちょうど中間(ニュートラル)で止めます。ここが立ったときの骨盤の理想ポジションです。立位でも同じように確認しましょう。
✅ポイント:恥骨と左右の腰骨を結ぶ三角形が床に対して水平になっているかをチェック!
【STEP2】骨盤底筋・腹横筋を活性化
呼吸を使ったインナー強化法です。
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鼻から息を吸ってお腹を膨らませる
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吐きながら「おしっこを我慢するように」下から締めて、お腹をへこませる
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そのまま背骨を上に引き上げるような意識を加える
この一連の動きが、バレエで求められる内側の支えになります。
【STEP3】引き上げを「床から」感じる
床を押す感覚を使い、身体全体を引き上げていきます。
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両足を肩幅に開き、真っ直ぐ立つ
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足裏で床を押すように立ち、そこから背骨を上に伸ばす
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肩と首は脱力して、自然に呼吸を続ける
このとき、頭頂が天井に引っ張られるようなイメージを持つと良いでしょう。
【STEP4】バーレッスンで応用する
プリエやタンデュといった基礎レッスンの中で、上記の感覚を意識しながら動いてみましょう。特に「軸足で床を押す→身体が引き上がる→動脚が出る」という流れを意識すると、自然な引き上げが身についていきます。
🔄 日常でできる「引き上げ」習慣
バレエのレッスンだけでなく、日常生活でも引き上げの意識を高めることができます。
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電車内で立っているときに床を押して背骨を伸ばす
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歯磨き中に骨盤を立てて重心を確認
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デスクワーク中に背筋を伸ばし、肩の力を抜く
小さな積み重ねが、レッスン時の身体感覚を大きく変えてくれます。
🌟 引き上げができると、バレエがもっと楽しくなる!
「引き上げ」が体得できると、以下のような変化を感じるはずです:
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動きに無理がなくなる
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首・肩・腰の負担が軽減される
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バランス力や回転の安定性が上がる
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なにより、踊っていて気持ちがいい!
📌 まとめ
引き上げとは、見た目の姿勢を良くするだけでなく、内側から支えられた強くしなやかな身体をつくることです。日常のクセを見直し、インナーを活性化し、重力と拮抗する力を感じること。これを習慣にしていけば、大人からでもバレエの深みをどんどん感じられるようになります。
ぜひ今日から、あなたの身体の中心と向き合ってみてください。